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派遣契約の無効と労働契約の関連性について

直接雇用労働者と派遣労働者および業務請負契約の違いについてですが、前者は紛れもなく、その会社で直接雇用している社員です。会社と雇用契約を行い労働するものです。派遣労働者は、派遣元会社から労働者を供給された社員です。派遣元での雇用を成立させながら、派遣先での指揮命令で労働します。そして業務請負契約とは、簡単にいうと業務の結果を約束した契約(仕事を完成させることが目的)で仕事を行うものなので、発注者が請負者に対して指揮命令を行うことはできません。ですので、派遣労働者は請負契約では労働できません。では、自社で雇用した社員を他社との請負契約の基に労働させる場合はどうなるのでしょうか。今回は、偽装請負と派遣労働者の関連についてご説明します。
Xは平成16年1月にA会社と労働契約を締結し、A会社とY会社との業務請負契約の基に、Y会社B工場でY会社の指揮命令下で労働していました。その後、XがY会社での労働を「偽装請負」として労働局に告発し、Y会社が是正指導を受けたことを契機にA会社はY会社との業務請負から撤退しました。A会社は、Xに対して次の仕事場を打診しましたが、Xはこれを拒否し、平成17年7月20日にA会社を退職しました。Y会社は、Xからの直接雇用の要請を受けて平成17年8月2日からXを有期雇用契約で雇入れることとなりました。その後、
Y会社は、平成18年1月末日をもってXとの契約期間が満了するものとして、契約更新を拒絶しました。Xは、A会社を退職する以前から、Y会社での黙示の労働契約が成立していたなどと主張して、地位確認等を求めて訴えを起こしました。(パナソニックプラズマディスプレイ事件:最2小判平成21年12月18日(民集63巻10号2754頁・労判993号5頁)
先に記載したとおり、業務請負契約に基づき社員を労働させる場合は、発注者(この場合はY会社)の指揮命令を受けることはできません。Y会社は、Xを自社の指揮命令下で就労させており、A会社はXを派遣契約で就労させていたわけではないので、これはいわゆる「偽装請負」にあたります。労働契約法第6条では、「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。」となっており、Xは偽装請負であるA会社との雇用契約は無効であり、Y会社と黙示の労働契約があり、実際に労働の対価として給与を支給されていたのであるから、労働契約法6条のとおり、XはY会社の社員であると主張したわけです。判例は、「Y会社は、Xの採用に関与したとは認められず、給与の支払額についても決定していたといわれる事実もうかがえない。また、A会社は、Xに対してB工場の他の部分に就労するように打診するなど、Xの配置を含む具体的な就業形態を一定の限度で決定しうる地位にあったと認められるので・・・・Y会社との間に黙示の労働契約が成立していたとは認められない」という結果になりました。偽装請負で、派遣契約でないとしても、実態が派遣である以上、労働者派遣にあたり、結果としてA会社とXは雇用関係にあたるという事です。なお、違法派遣の場合は労働者供給となり、職安法44条「何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。」に違反するという点について、判例はこれを否定しました。

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2013年07月25日 未分類 トラックバック:- コメント:0

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