解雇が無効となった場合の賃金について

解雇された労働者がその解雇が無効であると裁判を起こしたとします。使用者は解雇したのだから労働者の出社を拒否します。労働者は解雇無効と考えているから出社を要請します。結果として、使用者側の出社拒否により出社が出来なかったとします。裁判中、労働者は生活の為に他社で就労し、賃金を受け取ったとします(これを中間利益といいます)。そして、最終的に裁判が解雇無効となった場合に、使用者は労働者に対してどのような債務が生じることになるのでしょうか。今月は、いずみ福祉会事件(最3小判平成18年3月28日(労判933号12頁・判時1950号167頁)について見ていきたいと思います。
 XはYに雇用されておりましたが、平成11年5月18日に解雇されました。そこで、Xは解雇無効であるとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認と、解雇後の賃金についての支払いを求めて訴えを起こしました。Xは、裁判中に他社での就労を行い、その就労期間中の合計収入は①358万123円(中間利益)でした。Xが平成11年5月19日から平成13年4月30日(本件期間)にYから支払われるべき月例賃金の総額は②552万2346円で、その内訳は、上記他社に就労していた時期に該当するのが③480万2040円で、就労期間外に該当するのが④72万306円でした。また、XがYから受け取るべき期末手当等の合計額は⑤249万7060円あり、その内訳は、他社就労期間に該当する額が⑥196万8836円で、就労期間外に該当する額が⑦52万8224円でした。民法536条2項において、労働者が使用者の責めに帰すべき事由によって解雇された場合に、解雇期間中に他の職について得た利益(中間利益)がある場合は、使用者は労働者に支払うべき賃金からこの中間利益を控除できるとされております。すなわち、中間利益を得ていた期間中に該当するYから支給されるべき上記③480万2040円から上記①358万123円(中間利益)を引いた122万1917円と、期末手当として支給されるべき上記⑤249万7060円の合計371万8977円を支払うという事になります。ところが、労基法第26条には、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」と定められており、この趣旨を考慮すると、使用者は、上記③480万2040円の60%である⑧288万1224円は強制的に支払わなければならないことになります。よって、中間利益が控除できるのは、③480万2040円から⑧288万1224円を引いた残額⑨192万816円からであり、差引いた中間利益の残額は⑩165万9307円となります。この中間利益の残額は、期末手当で就労期間に該当する上記⑥196万8836円からも控除することができるので、これで中間利益の控除は全て行い、差引⑪30万9529円となります。よって、使用者Yは労働者Xに対して支払うべき賃金は、合計⑫(⑧+⑪)319万753円となり、これに就労期間外に支払われるべき賃金(④+⑦)の⑬124万8530円を加えた⑭443万9283円が最終的な金額となる訳です。賃金から控除できる中間利益は、「当該賃金の支給対象期間と時期的に対応する期間内に得た中間利益」となりますが、結果として使用者の責めに帰すべき事由によって労働者が仕事に就けないとされた場合は、民法536条2項では、対象期間外の賃金については全額支払わなければならないのです。解雇有効を成立させやすくするためには、就業規則内の懲戒事由や服務規律の整備、顛末書や始末書、減給の制裁、出勤停止等を日常的に習慣づける必要性は十分にあると考えます。

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2013年09月11日 未分類 トラックバック:- コメント:0

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